ハッピーバースデー 陸

今日は七夕。

1年に1度・・・ の、そう、あの日だ。


え? 織り姫と彦星が1年に1度だけ会える? 晴れるといいね?

って、違うだろっ!?

七夕と言えば、7月7日! オレ 今野陸の誕生日だろっ!?

まぁ、彼女でもないキミが覚えてるわけないから、いいんだけどさ。

それに今日は結衣が・・・・・


「え・・・と。 陸んちでお祝いしない?」


って、オレんちに来てくれることになってる。


だから邪魔しないでくれよな?

・・・おっと、結衣が来たみたいだ。



「・・・ケッコー荷物多いね?」

「うん。 ケーキ用意してきたの。 美味しいかどうかはアレなんだけど・・・」

「そんなん! 結衣が作ってくれるものならなんだっていいよっ!!」

「キッチン貸してもらえる? 仕上げだけしたいから」



結衣が荷物を持ったままキッチンに入る。

・・・しかし、でけーバッグだ。



「荷物、こっち置いとけば?」

「えっ? や・・・ 準備に使うものがいろいろ入ってるからいいよっ!」



バッグを抱えて慌てる結衣。

なんだろう?

オレがいつまでも結衣の側にいたら、



「・・・ねぇ? 見られると作りづらいから、リビングで待ってて?」



とオレをキッチンから追い出そうとする。



「絶対! ぜーったい見ちゃダメだからねっ!?」



しつこいぐらい念を押す結衣。

・・・?

そんなに作るところを見られるのが恥ずかしいのか?

もしかして・・・



「陸、大好き♪」



なんて、プレートがくっついてたり・・・

スゲーベタだけど、好きな女からそんなことされたら、やっぱ嬉しい・・・

そんなことを想像したら、どんな顔をしながらケーキを用意しているのか・・・結衣の顔を見てみたくなった。



「来ちゃダメって言ったでしょッ!!」



オレがキッチンを覗く前に、足音を聞きつけた結衣が牽制してきた。

しぶしぶリビングに戻るオレ。

一応テレビなんかつけてみたけど、



「あ。 クリームが・・・」


とか、


「イチゴの位置が・・・ヘン・・・」



なんて、結衣のカワイイ呟きが聞こえてきて、全然テレビに集中できない。

・・・しかし・・・

どんなケーキなんだろ・・・?

イチゴとかクリームとか・・・? 普通のケーキっぽいけど・・・

プレートを見られるのが恥ずかしいのかもしんねーけど、あそこまで牽制するか?

見るなと言われると、余計に見たくなる。

まるで、「鶴の恩返し」の男の気分だ。

なんてな。 結衣がなんかに変身するわけ・・・・・

――――――・・・はっ!?

ま、まさか・・・





って・・・ 結衣自体がケーキになってたり――――――ッ!?



「ちょっと恥ずかしいけど・・・ 誕生日だし、頑張ったの」



とか――――――っ!?

・・・お、落ち着け、オレ!!

今考えることは・・・・・・



―――仮にそーなったとして・・・・・ どこから手をつけるかだ。



これは慎重に考えないと・・・

いつもはイチゴから食べてしまうオレだけど、この場合・・・

ソコは1番のお楽しみになるから、やっぱり最後だろ?

そんでそのまま、嬉しい展開に持ち込んで〜〜〜〜〜〜・・・



「・・・陸? 出来た、よ?」



遠慮がちな声が背後からかかった。

マッハのスピードで振り返る。



「お、お待たせ・・・」



―――って・・・

フツーのケーキじゃねーかッ!!



「誕生日おめでとう」

「・・・ありがと」



って、冷静に考えたら、結衣がそんなAVみたいなコトするわけねーよな・・・



「・・・もしかして、美味しくない?」

「いや、ウマいよ・・・」






頑張れ陸!

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