パーフェ☆ラ 第2章

C カップル成立!


あまりの出来事に、あたしも付けまつ毛たちも呼吸をするのすら忘れてしまった。
「先輩たち・・・ そんな物騒なもん、さっさとしまってよ?」
メグが付けまつ毛に手を差し出す。「オレが預かってもいいけど?」
2階のベランダから飛び降りてきたのはメグだった。
「〜〜〜・・・なによ! カンケーない人は、引っ込んでてよっ!」
と付けまつ毛たちがメグを睨みつけたとき、
「・・・オレ、怖い女キラ〜イ」
とまた頭上から声が降ってきた。 涼が手すりにもたれかかるようにしてあたしたちを見下ろしていた。
「〜〜〜ッ! も、もうっいいわよっ!!」
付けまつ毛たちが慌てて逃げいてく。
―――イジワル女子が退場するあたりは、マンガの通りなんだ?
「・・・何やってんの?」
メグが呆れたような目線を向ける。
「何って・・・ ケンカだよ」
でも・・・やっぱりこの辺はマンガの通りじゃない。
あたしが読んだマンガでは、助けた男に主人公の女の子が抱きついて、
「大丈夫か?」
「うん・・・ 怖かった・・・」
なんてやって、そのあと熱い抱擁が・・・
って、あたしの基準って、マンガばっかだよね? 情けない・・・
ま、これで実体験が一つ増えたからいっか。 あたしって、超プラス思考!
「あんなのはケンカって言わないだろ? ケンカの域、超えてるよ」
「ケンカに境界線なんかないからっ! どっちかが負けるまでやるのっ!!」
・・・お? これも名言じゃない?
またまたあたしが自分のセリフに酔っていたら、
「・・・バカじゃねーの? お前」
とメグが笑っている。「一応女なんだからさ、もうケンカとか止めろよ」
―――真由も女の子なんだからさ・・・ もうケンカとか止めたほうがいいよ?
・・・急に小学校のときメグに言われたセリフを思い出した。
そのあと、
―――これからだって、何かあったらボクに言いなよ。
って言ってくれたんだよね・・・
あのときからメグといるとドキドキしだして・・・
・・・ダメだ。 なんかまたドキドキしてきた。
「べ、別にっ! そんなこと心配してもらわなくたって、平気だしっ! 今だって、あたしが勝ってたんだから! あっちがあんなコトするまでは・・・」
ドキドキしてるのがバレないように、慌てて言い訳めいたことをする。
涼が2階から降りてきた。 こっちはちゃんと階段を使って。
「大丈夫か? 真由」
「うん。 ・・・危うく、マジで涼に葬式来てもらうところだったよ」
あたしがそう言ったら、涼は笑いながら、
「やっぱ いいわ、お前!」
とまたあたしの頭をグシャグシャにしてきた。「でも・・・ マジで悪かったな? オレのせいで・・・」
「あ〜・・・ いいよいいよ! もうあんなカゲキなことはないだろうし・・・ それに、色々勉強にもなったしね。名言も生まれたし」
あたしと涼がそんな応酬をしていたら、
「良くないだろ? お前、髪の毛焼かれるところだったんだぞ?もっと危機感持てよ!」
とメグに怒られた。メグはそのままの勢いで、涼を振り返り、
「お前もっ! 大体お前がちゃんと否定してたらこんなことにならなかったんだからなっ!」
・・・涼と2人で説教されてしまった。
「・・・ゴメン」
とあたしが呟くように謝ったら、あたしの隣りで涼が、
「・・・そういうお前こそ、どーなんだよ?」
とメグを睨み付けた。「恭子のこと、好きなのか? 付き合ってんのかよ? ハッキリしろよっ!?」
はっ!
そ、そーだよっ! メグこそ、どーなのよっ!?
あたしも涼の勢いを借りて、一緒になってメグを睨み付けた。
メグは涼の顔をじっと見たあと、
「好きだよ?」
とサラリと言ってのけた。
涼が目を見開く。 あたしもそれ以上に見開く。
ちょ、ちょっと? メグ―――ッ!!
「・・・って言ったら、どうする?」
「・・・なッ!?」
メグはちょっと笑いながら、
「学校イチのモテ男もいいけどさ。フラフラしてないで好きな女ぐらい捕まえとけよ?」
メグがあたしと涼の背後に目線を向ける。「ホラ」
振り返ったら恭子が走ってくるところだった。
「真由っ! 大丈夫ッ? 3年女子に連れてかれたって聞いたんだけど・・・」
「あ・・・ 大丈夫だよ。メ・・・じゃなくて、千葉くんと涼が助けてくれたから」
「そーなんだ・・・ 良かったぁ」
恭子は心底心配してくれていたみたいで、大きな溜息をついた。
「もうっ! 涼がさっさと否定してくれないからだからねっ! 恭子にまで心配かけちゃったじゃん!!」
涼の背中を思い切り叩く。涼は明後日の方向を向きながら、
「あ―――・・・ 恭子、悪かった、な?」
「え? ううん・・・ 別に、そんなのいーんだけど・・・」
と恭子も俯く。
その格好のまま固まっている2人。
・・・あ―――ッ!! じれったいっ!!
もう、あたしから言っちゃおうかなっ!?
涼は恭子が好きなんだよ、って!
恭子も涼が好きなんだよ、って!!
・・・あたしが口を開きかけたら、
「謝ることはそれだけじゃないだろ? 涼」
とメグが言った。「好きな子の気持ち確かめるために、他の女と噂になるなんて・・・ やることがガキっぽいぞ?」
涼が顔を赤くしてメグを睨みつける。
「いらないなら、マジでオレもらうし?」
「ち、千葉くん?」
メグが恭子の肩に手をかける。
「おいっ!」
「ちょ、ちょっとっ!」
あたしと涼が同時に慌てる。・・・その反応を楽しむように眺めているメグ。
「・・・なんか話あるみたい」
メグが恭子の肩から手を下ろす。そして、「だよな? 涼?」
と涼に顔を向ける。
「え・・・ なに・・・?」
戸惑う顔の恭子。
涼はしばらくの間黙ってから、思い切ったように、
「・・・真由とは・・・ なんでもない。 たまたま会って、メシ食っただけ」
「う、うん・・・」
「それから・・・」
と言いかけて、涼があたしとメグを振り返る。「・・・お前ら、どっか行けよ?」
ええ―――ッ!?
あたしも恭子が喜ぶ瞬間、見たい―――ッ!!
「・・・じゃ、先に教室戻ろうか? 市川さん?」
「え? あ・・・ ちょっとぉッ!!」
メグにその場を強制退場させられた。 1番近い入り口から校舎に入る。
入ってすぐ、あたしは扉の裏側に隠れるようにして恭子たちの様子を窺った。
もうくっつくのは分かってるんだけど、やっぱり気になる!
涼、どんなふうに恭子に告んだろ?
やっぱ、ロマンチックなのに憧れるよね〜ッ!! 女子としてはッ!!
しかも、恭子オトメだし・・・
あたしが1番キュンときたセリフは・・・ 昔読んだマンガの・・・
―――・・・って、またマンガかい・・・
ま、しょーがないよね? あたし今までまともに告られたことないし・・・ 虚しい・・・
「やっとくっついたか。あの2人」
あたしの頭上でメグが呟く。「・・・また立ち聞きかよ? ホントにいいシュミしてんな?」
「・・・って、メグだって聞いてんじゃんっ!!」
あたしはメグに突っ込んだあと、「・・・メグ、涼が恭子のコト好きなの知ってたの?」
「なんとなくな。まぁ、確信持ったのはオレと恭子が噂になったときだけど。あいつヤケに突っかかってくるし、探り入れてくるし」
分かりやすいんだよな、と笑うメグ。
なんだ・・・ メグは 自分が恭子と噂になってんの前から知ってたんだ?
あたしが聞いたときはトボけてたくせに・・・
・・・って、そーなると、クラスでもその噂知らなかったのって、あたしだけだったんだ・・・
やっぱり異性関係と縁遠いせいなのかな・・・ そういうのに疎いのって・・・
軽く落ち込む。
「・・・なんか、ここからじゃ聞こえないな、やっぱり。 教室戻るか」
ヒトの立ち聞き云々を責めた人間のセリフとは思えない。 ・・・けれど、それを突っ込むのはまた今度にして・・・
教室に戻りかけるメグの背中に向かって、
「っていうかさっ! ヒトのことばっか言ってないで、自分はどーなのよっ!」
「ん?」
「あたしたちっ!! ・・・どーゆーカンケーなの?」
ちょっと睨むようにメグを見上げる。 メグはわざとらしく腕を組んで、
「どーゆーって・・・ まず、幼なじみだよな?」
それだけっ!?
「・・・教室では、それすら隠してる感じじゃん! ・・・あたしのコト、市川さんとか呼んでる・・・」
「間違いじゃないだろ? ・・・それに、お前だって名字で呼んでんじゃん。オレのこと」
「そ、そーだけどぉっ」
・・・って、なんでまた呼び方の話なんかしてんの? あたしたちっ!
「そんなことじゃなくてさぁ・・・」
「そんなことじゃなくて? 何?」
イ、イジワルだな〜〜〜ッ!!
「もうっ! メグっ!? やっぱり5年のときのこと根に持ってんでしょっ!? だからそんなイジワルなこと言うんでしょっ!?」
「オレ、みんなから優しいって言われてるよ?」
みんな騙されてるっ!
「〜〜〜はいはいッ!分かりましたッ!! せいぜい女子人気を上げて下さいッ!!」
ムカついたから、メグを置いてさっさと教室に戻ろうとしたら、
「お前だって、なんにも言わないじゃん」
とメグに腕を引っ張られた。「オレにばっか、言わせよーとすんなよ」
そのまま背中を壁に押し付けられる。
メグとの距離が近すぎて、また胸がドキドキしてきた。
「そ・・・そーだっけ? あたし、何も言って・・・?」
「・・・言ってない」
メグがあたしの顎に手をかける。 慌てて俯く。
ちょ、ちょっと待って!? 顔、近すぎっ!!
「あっ・・・あっ!! じゃ、言うねっ!? うんっ!言う言うっ!!」
「・・・やっぱり、後でいいや」
顔をメグの方に向かされた。
「え、え〜っと? あたしたちって・・・な、なんだろ・・・ね?」
「後でいいって・・・」
メグがさらに顔を近づけてきた!
うわうわうわ―――ッ!!
「や、やっぱ・・・ 幼なじみかなっ!? うんっ! そーだねっ!!」
「だから、後で・・・」
とメグは呟くように言って、「・・・って言うか、黙れ」
「―――・・・ッ!!」
2回目・・・ いや、あのときすでに2回してるから、3回目の・・・キス。
・・・やっぱり、キンチョーしちゃうよ―――っ!!
全然、慣れないっっ!
離れたいんだけど、タイミングが分かんなくてあたしから離れられないっ!!
あたしが焦りまくっていたら、やっとメグが唇を離した。
「・・・なに、固まっちゃってんの?」
「かっ、固まってませんっ!」
あたしがムキになってそう返したら、メグが楽しそうに笑った。
・・・もうっ!! なんか、バカにされてるみたいなんだけどっ!?
でも、なんとなく本気で怒る気にはならない。
・・・なんでまたキスしたんだろ? メグは・・・
あたしはメグのこと好きだから・・・い、イヤじゃないけどさっ!(緊張するだけで)
結局恭子とは、本当になんでもなかったみたいだけど・・・
―――ってことは、やっぱりメグも、あたしのコト・・・? って思っていいの?
1限目の始まるチャイムが鳴る。
・・・SHR終わっちゃった。
遅刻扱いか・・・
ちゃんと来てたのに、3年女子のせいで・・・っ!!
3年女子に腹を立てながら教室に戻ろうとしたら、
「9時」
とメグが声をかけてきた。
「え?」
「部活終わって帰る時間それくらい。 話したいなら、9時ごろ部屋いるけど?」
メグっ!!
やっと、話してくれるんだね?
ちゃんと聞かせてよねっ!? メグの気持ち!! ・・・あたしも言うからさ。
嬉しくなってメグの制服の袖をつまむ。
メグと目が合い、笑いかけたら・・・
「急げっ! そっち1限目沢村のエーゴだろ? 当てられるぞ?」
「一応、予習はしてきてあるけど・・・」
涼と恭子が飛び込んできた。
あたしは慌ててメグから飛びのくように離れた。
涼と恭子が眉をひそめてあたしたちを見つめる。
み・・・ 見られた? 今の・・・
「べ、べべ、別にっ、あたしたち何もしてないからっ!!」
大慌てで言い訳をする。「ね、ねっ! 千葉くんっ?」
「ん? あ・・・あ〜」
メグはあたしを見たあと、「・・・してないしてない」
と手を振った。
恭子は真っ赤な顔をして、
「・・・ウソッ!! 本当は聞いてたんでしょっ!? ヒドいよっ、真由っっ!!」
あ・・・ なんだ。 そっちか・・・
あたしは安心して、
「いや、ホントに何もしてないから! 立ち聞きとか? しようとしたけど、全然聞こえなかった! ね?」
とメグを振り返る。
メグは首を傾げている。
恭子は相当恥ずかしいみたいで、顔が真っ赤だ。
「もうっ! 千葉くんまでこんなことするなんて・・・ッ!!」
「いや・・・ オレは止めなって言ったんだよ? そしたら市川さんが・・・」
おいっ! メグっ!?
恭子と涼に責められながら教室へ向かう階段を上がる。
―――・・・メグめッ!!
自分だって立ち聞き(未遂だけど)してたくせに、あたしにだけ罪を被せて〜ッ!!
・・・よしっ!
今夜ベランダで話すとき、1番にこのこと謝らせてやるっ!!
絶対、ゴメンって言わせてやるっ!!


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