パーフェ☆ラ 第4章

@ スパルタ家庭教師


「はぁ〜・・・ この前中間が終わったと思ったら、もう期末だよ・・・」
黒板に書かれた期末テストの日程を手帳に写しながらミドリが愚痴る。
「ホントだよね。 ウチも2学期制にしてくれればいいのに・・・」
あたしも一緒になってそう言ったら、
「でも、いーじゃん? 真由は。 メチャクチャ出来るカテキョついてんだから」
とチハルが。
「ホントだよっ! いつもはスゲー低空飛行なのに、なんだよ!この前の中間の順位はっ!?」
ミドリも一緒になってあたしを睨みつけてきた。
「イヤ・・・ マ、マグレだよっ!!」
あたしは慌てて首と手をぶんぶん振った。
あたしの名前は、市川真由。 県立総武高校の2年生。
総武高校は県内でも屈指の進学校!・・・ってワケじゃないんだけど、まぁ、殆どの生徒が大学や専門に進むって感じの、普通よりちょっと上ってレベルの学校。
あたしの中学の成績から考えたらそれでも相当レベル高い学校だったんだけど、イロイロ理由があって死に物狂いで勉強したら、マグレで受かってしまった。
そんな感じで滑り込めた学校だから、当然だけど高校でのあたしの成績はものすごく悪い・・・
1年のときなんか、学年315人中、いつも・・・250番くらいだったもんね。テスト・・・
総武に入ったってだけでお母さんやお父さんは、
「真由の学力で、よく総武に!」
って喜んでくれてるから、今の成績でも目くじら立てて怒られたりはしてないんだけど、
「トップ10に入れとは言わないけど、せめて今より成績落とさないでよね? お母さんが怒られちゃうんだから・・・」
てなことは、しょっちゅう言われている。
実はあたしのお父さんは、ちょっと前から単身赴任をしている。その間にあたしの成績が落ちたりしたら、お父さんに顔向けできないってお母さんは心配していた。
・・・・・そう。 していたの。 この前の中間までは。

「ま、真由っ! スゴイじゃないっ!!」
中間テストの結果を見て、お母さんはかなり驚いていた。
「今日はなんでも真由の好きなもの作ってあげる! あ、お父さんにも教えてあげなくちゃっ!」
「・・・そんなオーバーな・・・」
とあたしは手を振りつつ、内心、驚きでいっぱいだった。
―――なんとあたしは、中間テストでいきなり147位に上がることが出来た。
「これというのも、メグちゃんのおかげよねっ! あ、やだ。お母さんったら、メグちゃんに何もお礼してないっ」
実はあたしは 前回の中間テストの勉強を、お隣さんで幼なじみでクラスメイトで・・・・・・で、最近やっとお互い素直になって彼氏彼女のカンケーになれたメグ(フルネームは千葉恵っていうんだけど)にみてもらっていた。
別にあたしが頼んだわけじゃないんだけど、お母さんが、
「メグちゃん、ものすごく成績いいんですって〜? 良かったらウチの真由の勉強みてあげてくれない?」
なんてメグに直接頼んじゃって、それにメグも、
「いいですけど?」
なんて気軽に引き受けちゃったんだよね。
確かに成績上げてもらって感謝はしてるけど(メグがかけたヤマが当たった)、あのスパルタっぷりって言ったら・・・ハンパじゃなかったんだけどっ!?
「・・・いいよ、別に。お礼なんか・・・」
とあたしが言っても、お母さんは、
「何言ってんのっ! 一気に100位も上げてくれたのに!!」
と言って聞かない。
「マジでいらないって!!」
というあたしの声を無視して、お母さんはウチを飛び出して行った。 お礼の品を買いに・・・
でも、ホントにいらないんだよ・・・
・・・その分、あたし、相当お仕置きされてんだから・・・
あれ、お仕置きとかメグ言ってたけど、絶対面白がってたもん!
唇腫れるかと思ったよっ! マジでっ!!
大体、なんでお仕置きが・・・ キ、キスなのよ・・・
しかも、チョー激しいし・・・
途中まで、勉強の合間にキスって感じだったのに、気付いたら キスの合間に勉強、みたいになってるし・・・
あ、なんか思い出したら・・・ 恥ずかしくなってきた。
っていうかさっ! メグって意外と手が早いっていうか、ケッコーエロいよねっ!?
あのときだって、あたしがノーブラなの気づいてた上で、エロ全開で迫ってきたし・・・
全力で抵抗したら、
「んじゃ、再試合でいーや」
って、やっとやめてくれたけど・・・・・
―――って・・・ 再試合って、いつっ!?
それだって、急に言われたって困るんだからねっ!? 前もって言ってもらわないと・・・ッ!!
いや、言ってもらったって、それはそれで困るんだろうけど・・・・・・
とあたしが「再試合」にドキドキしていたら、メグにあげるお礼を買いに行ったはずのお母さんが、思ったよりも早い時間で帰ってきた。
「あれ? もう買ってきたの?早いね?」
ところでお母さん、何買ってきたんだろ?
高校生の男の子が欲しがるものなんてお母さん分かるのかな?
・・・でも・・・ あれ? お母さん、手ぶら?
あたしが首を捻っていたら、お母さんは顔を輝かせて、
「メグちゃんね、真由の家庭教師やってくれるって!」
「・・・・・は?」
「今ね、お隣行って頼んできたの! そしたら、引き受けてくれたのよ〜!」
お礼の品を買いに行くと言ってウチを出たお母さんは、なんとそのままメグんちに行って、メグにあたしのカテキョをやってくれるように頼みに行ったらしい!
「ちょっ・・・!? そんなの・・・迷惑に決まってんじゃんっ!!」
「ちゃんとバイト代払うわよ? もう約束もしたし」
―――ウ、ウソでしょ・・・?
てっきり中間テストの勉強だけで終わりだと思ってたのに・・・
それ以来、メグのスパルタカテキョが続いている・・・
いや、スパルタっぷりは続いてるんだけど、ちょっと変わってきたところが・・・ って、あたしの気のせいかな…
「おいっ!真由っ!? 聞いてるっ?」
あたしがボーっとこれまでのことを思い出していたら、ミドリに手帳で頭を叩かれた。
「いた・・・ 何よ、急に・・・」
「急にじゃないっ! さっきから何回も呼んでんのに・・・ どこトリップしてんだよ、お前はっ!!」
・・・また、話を聞いてなかったみたい・・・
ホントに妄想癖あんのかな?あたし・・・ しょっちゅうこんな感じで突っ込まれるけど・・・
「ゴメン。ちょっと考え事・・・ って、何?」
「だからぁっ! そんなに凄腕のカテキョならウチらにも紹介しろって言ってんの!」
え、ええっ!?
「む、無理だよっ!」
慌てて首を振る。
「なんで?」
「なんでって・・・」
あたしたちが付き合い始めたってコトをまだミドリたちは知らなかった。
って言うか、あたしたちがお隣同士の幼なじみだということすら、クラスの誰も知らない。
2年になって、久しぶりにメグと同じクラスになったときには、あたしたちまだ絶交したままだったから、他人のフリしてたんだよね。
結局仲直りできたあとも、なんとなくそのままただのクラスメイトって程度にしか接してないし・・・
ま、今さら、
「あたしたち、幼なじみでウチも隣同士なの。 ついでに付き合ってるから!」
とか宣言するのもヘン・・・っていうか恥ずかしいから、いまだに教室では、
「千葉くん」
「市川さん」
とか呼び合ってる・・・・・
そんなんだから、ミドリたちに、あたしのカテキョがメグだって言うことは当然話せない。
「ほ〜ら! またトリップしてるっ!」
とミドリがあたしに突っ込んだとき、
「ゴメン。 ちょっと黒板見せてくれる?」
と凄腕カテキョがやって来た!
「どうぞ、どうぞ〜♪」
チョー面食いのチハルが極上のスマイルをメグに向ける。
・・・・・チハル、メグのこと狙ってんのかな?
「てか、千葉でもテスト期間とか気にするんだ?」
手帳にメモするメグの手元を覗き込みながら、ミドリがメグに話しかける。
「そりゃするよ。 なんで?」
「だって、この前の中間、4位だったじゃん? 別に勉強とかしなくても良さそーじゃん。いきなりテスト問題配られても100点取りそう」
ホントだよ・・・ メグ、頭良すぎだよ・・・
てか、いつ勉強してんの?
平日は部活で遅いし、土日だって部活あるし、それの合間にはあたしのカテキョやってくれてるし・・・
背は高いし、バスケ上手いし(部長だし)、面食いのチハルが気に入るくらいカッコいーし・・・ その上 頭もいいなんて、ホントにパーフェクト過ぎるよっ!
「ははは。 そんなワケないでしょ? この前はたまたまヤマが当たっただけ」
・・・そんなワケないでしょ? ・・・・・だって。
前から思ってたことだけど、なんでメグってあたし以外の女子には愛想いいんだろ?
あたしにだったら絶対、
「んなワケねーだろっ!」
とか突っ込むよね、きっと・・・
「ああん! あたしもそのヤマ教えて欲しかった〜!」
とチハルがメグの腕に手をかける。
「ちょっ・・・!?」
なにくっついてんのっ!!
・・・と一瞬言いかけて、慌てて口をつぐむ。
チハルはあたしたちのコト知らないんだからしょうがないんだよね・・・
そんなあたしの胸中を知らないミドリとチハルは、
「今度は、あたしたちにも教えてよ。そのヤマ」
「あ、そーだよっ! 一緒にベンキョしよ? 千葉くん♪」
「え〜? マジで? つか、外れるかも知れないし」
ミドリとチハルに挟まれるような格好で、ちょっと困った顔をするメグ。
・・・あ〜、はいはい。 いいですね、モテモテで!
―――・・・
・・・・・・なんか、面白くない・・・
「ホントに教えてよ! あたし数学苦手なんだぁ」
あ、またチハル メグの腕触った・・・
「ん〜・・・ でも、色々忙しいんだよね。部活とかあるし・・・」
「そーなんだぁ。残念〜・・・」
チハルとミドリが大げさに肩を落としたら、メグは一瞬考えた後、
「・・・じゃ、数学はヤマかけとか無理だけど、古文とか? この辺かもって程度でいいなら・・・」
「ホントっ!? やったぁ!」
途端に顔を輝かせるミドリとチハル。
・・・また女子人気上げてるよ。メグのヤツ・・・
あ〜っ! もう、ホントに面白くないんだけどっ!
とあたしがふて腐れていたら、
「・・・市川さんは? いいの?」
「えっ!?」
今まで、まるであたしなんかいないかのようにミドリやチハルと話していたメグが、急にあたしを流し見た!
「・・・あ、あたしはっ・・・」
な、なんで急に振るかなっ!? そういうことっ!
なんて答えたらいいのか・・・ 困るじゃんっ!?
一応、内緒にしてるんだよね? あたしたちのこと?
とあたしが焦っていたら、
「あ〜、真由はね、いいのっ!」
とチハルがあたしとメグの間に入ってきた。
「なんで?」
「凄腕のカテキョがついてるからっ! イッキに100位も上げたんだよ?」
「へぇ・・・」
メグがちょっと目を細める。「すごいね?」
何コイツ、何コイツ、何コイツ―――っ!?
絶対あたしの反応面白がってるっ!
あたしがポーカーフェイスとか苦手なの知ってて・・・っ!!
・・・反撃してやるっ!
「そっ! すっごくスパルタなんだよねっ!そいつっ! んで、チョーイジワルだしっ!! ちょっと性格悪いかもっ!?」
とメグを睨みつけたら、
「・・・じゃ、間違えたら大変だ。 お仕置きされちゃってるとか?」
と憎らしいぐらいソフトな笑顔で返してきたっ!
そのメグの笑顔に・・・・・ メチャクチャ顔が赤くなってるのが自分でも分かる・・・・・
反撃するつもりだったのに・・・・・ ム、ムカつく―――ッ!!!
「おいおいおいっ! なんか、カテキョのお仕置きって・・・ 響きエロくないっ!? 真由、マジでなんかされてんのっ!?」
「さっ、されてないされてないっ!!」
あたしがミドリたちと騒いでいる間に 黒板を写し終えたメグは、軽く笑いながら自席に戻って行った。
「・・・なんかさ、千葉って最近ホントにカッコ良くなってね?」
ミドリがメグの方をちょっと振り返りながら、小声であたしとチハルに耳打ちする。
「そりゃ前からそれなりにカッコ良かったけどさ・・・ なんか、余裕があるっつーの? ミョーに自信と色気があるっつうか・・・」
「あ!それあたしも思った―――!! 最近フェロモン振りまいてるよね。本人気付いてないだろうけど」

「〜〜〜もうさっ! あーゆーこと教室で言うのやめてよねっ!」
「なんで?」
メグは教科書を広げながら笑っている。
期末テストの時間割が発表になって、今日から部活動も一応はお休み。
いつもだったら平日は部活で遅いからメグのカテキョは無しなんだけど・・・
「部活ない日はカテキョ行くからな? 遊んでないでさっさと帰って来いよ?」
とメグからお達しが出ている・・・
そんなわけで夕食後またあたしはメグに勉強をみてもらっていた。
「なんで、じゃないじゃんっ! ・・・あたし、どーゆー反応していいのか、困るよ・・・」
あたしはメグを見上げて、「・・・一応、内緒にしてるんだよ、ね? あたしたちのこと」
―――今さらっていうテレはあるけどさ・・・
・・・あたしはメグがみんなに知られてもいいっていうなら、それでもいいんだよ?
って言うか・・・ ちょっと知られたいかも・・・
あ、別にみんなに自慢したいとか、イチャイチャしたいとかそんなコトじゃないんだよ!?
たださ・・・ 今日みたいなことあると、やっぱりちょっと・・・イヤだもん。
・・・あたしは、教室でチハルがメグの腕に手をかけていたことを思い出していた。
チハルはメグがフリーだと思ってるから、しょうがないんだけどさ・・・
あたしが俯いてそんなことを考えていたら、
「手と頭! 止まってる。 さっさと問3やれよ」
と教科書でメグがあたしの頭を叩いてきた。「ちょっと時間ねぇから」
メグが壁の時計を見上げる。
「え? だって、まだ7時半だよ?」
さっき始めたばっかじゃん?
「悪りーんだけど、今日は8時までな」
「なんで? 見たいテレビでもあるの?」
とあたしが聞いたら、お前じゃあるまいし、とメグはちょっとだけ笑って、
「用事があんの」
「こんな時間から? どっか行くの?」
メグは一瞬だけ考えた顔をしたあと、
「・・・ナイショ」
と呟いて、「んな事より、問3!」
とまた教科書に目を戻した。
何よ・・・ ナイショって・・・
と思いつつ、あたしも一応目線を教科書とノートに落とす。
・・・これ、この前やった問題と似てる・・・・・ ちょっと時間かかるかもしれないけど・・・ 解けそう・・・
―――けど。
この前から気になってることもあるし・・・ ちょっと・・・試してみようかな・・・・・
「・・・COS30ってなんだっけ?」
あたしはチラリとメグを見上げた。
「・・・・・√3/2」
メグはチッと舌打ちして、「って、お前この前も同じ事聞いたよな?」
「そ、そーだけどぉ・・・ だって、忘れちゃったんだもん」
「覚えらんねーなら、三角形書けよ! ・・・・・中間でも、お前数Uだけ赤点ギリギリだったろ?」
「う・・・」
あたしは中間テストで、他の教科は大体平均点くらい取れたんだけど、数学だけは平均を大分下回っていた。
「数学はヤマのかけようがねーんだから・・・ つか、数学なんか公式覚えときゃテスト勉強必要ねーくれーなのによ・・・」
「それはメグだけだよっ!」
あたしは頬を膨らましてメグを上目遣いに見上げる。
「ったく、しょーがねーなぁ・・・」
と言いながらメグの手があたしの顔に伸びてくる。
あ・・・ されちゃう? お、お仕置きっ!?
やっぱりするよね!? ・・・あたしの気のせいだったんだよね?
思わず肩をすくめて目を閉じたら―――・・・
「イタッ!!」
おでこに激痛が走った。
「な、なにっ!?」
驚いて目を開けると、目の前にメグの大きな手が。
もしか・・・・・しなくても、今デコピンした?
「次間違ったら、2本で行くから」
「えっ?」
あたしが戸惑っているうちに、メグはさっさと教科書のページをめくって、
「前のページ戻って。 そこに例題あるからそれやり直してみ」
え? ・・・って、それだけ?
あたし分かんなかったんだよ? この前もやったとこ。
ちょっと前だったら、・・・・・そ、相当激しい「お仕置き」してたよね?
「その問題やり直して次の問4やったら、今日は終わりな」
やっぱり、気のせいじゃない・・・
前まではちょっとでも間違えたり、やり方忘れちゃったりしてると、
「はい、間違った。 ・・・じゃ、お仕置きな?」
って言いながら・・・ キ、キスされてたのに。
絶対、減ってきてる・・・ お仕置き・・・・・
まぁ、あたしもちょっとは要領を得てきた部分もあって、前ほど間違わなくなったせいもあるんだけど・・・
べ、別にっ? どうしてもされたいってワケじゃないから、いいんだけどっっ!!
―――でもさ?
学校では他人のフリしてるし、平日も土日もメグは部活があるから、一緒にどっか出かけたりとか出来ないし…
そりゃ勉強も大事かもしれないけど、もう100番も上がったんだし、ちょっとは恋人っぽい事したいじゃん?
恭子と涼だってお互い部活で忙しいのに、ラブラブみたいだし・・・
涼もあれでケッコーマメみたいで、しょっちゅう恭子にメール送ったりしている。
ああ〜・・・ いいなぁ、恭子は。 ラブメールもらえて。
あたしなんか、メグがケータイ持ってないから、もらえるどころかこっちから送ることも出来ないもんね。
前に、
「ねぇ。 ケータイ持ってよ。 メールとかしたいし、すぐに連絡とりたいときだってあるし」
って言ったら、
「クラスは同じだし、ウチは隣同士だし・・・ ケータイで連絡取り合うより、会った方が早いじゃん」
って取り合ってくれなかった。
もうっ! そういうことじゃないのに〜〜〜ッ!!
ホントに用事があるときは、あたしだってそうするよ!
そうじゃなくて、つまんないこととかちょっとしたことをメールしあったりするのが楽しいんじゃん!
ケータイがあれば、離れててもいつでもメグに連絡取れるとか、いつでもメグの声聞けるとか、そういうことで安心できるんじゃんっ!!
デートはしてないし、ケータイでのラブトークやラブメールも出来ないし・・・
っていうか、あたしの部屋でしか、2人きりにならないよねっ!?
つまりそれって・・・ あたしたち、付き合うようになってから勉強しかしてないってことじゃんっ?
その勉強時間も、なんか最近少なく・・・短くなってる気がする。 今日だって早く切り上げるって言うし。
「再試合」どころか、全然ラブな雰囲気にならない・・・・・
「・・・お前、やる気あんの?」
「え?」
「全然進まねーじゃん」
「だって・・・」
あたしはメグから顔をそらして、「色々・・・ 気になることが・・・」
―――なんで「お仕置き」しなくなったの?
・・・・・なんて、聞けない・・・
「あ?」
「〜〜〜なんでもないっ! もういいよっ!!」
「? ・・・何怒ってんの? お前」
「怒ってない!」
「怒ってんじゃん」
と言いながらメグは壁の時計を見上げて、「あ、8時だ」
と自分の教科書を片付け始める。
「・・・ねぇ? メグ・・・」
あたしたち付き合ってるんだよね?
カテキョとその生徒って関係じゃないよね? 彼氏彼女だよね?
・・・・・なのに・・・ まだ2人でどこにも行ったことないんだよ?
デートとか? 恋人らしいことしたくない?
・・・って、そう思ってるの、あたしだけなのかな・・・
「何?」
「今度の日曜日・・・ どっか行かない?」
「? ・・・何? 図書館とか?」
「としょ・・・っ!? 〜〜〜違うよっ! 勉強じゃなくてぇっ!」
「じゃ、何? どっちにしろ、オレ用事あってダメだけど」
メグはあたしの胸中なんかツユとも知らない顔をしている。
「・・・も、いい」
なんかあたし1人でジタバタしてる感じで・・・ 悔しい・・・
メグはちょっとだけ首をかしげながら立ち上がった。
「・・・次、いつ?」
特にメグのカテキョは何曜日って決まっているわけじゃなかった。
メグも部活とかで忙しいし、最初から出来るときにって話だった。
「分かんねーな・・・ あとで連絡するよ」
「あ、そ・・・」
「ちゃんとそれまでノルマやっとけよ?」
「う、うん・・・」
あたしは、メグ推薦の問題集を渡され、毎日のノルマを課されている。
ホントにスパルタ教師!
メグの言うとおり勉強してたら、ホントに東大や早稲田にも行けそう・・・
って、あたしは元がよくないんだから、どう頑張ったって無理だろうけど。
・・・そう言えば、メグはどこの大学行くんだろ? もう志望大学とか決めてるのかな?
あたしがボサッとそんなことを考えていたら、
「んじゃな」
とメグはあたしの部屋を出て行こうとする。
「えっ!? ・・・・・ちょ、ちょっと待ってっ!?」
あたしは慌てて椅子から立ち上がった。
ちょっと・・・、今日まだ一回も・・・ キスしてないよ?
「何?」
ドアノブに手をかけたままメグが振り返る。
何・・・・・って・・・
―――なんて言う?
あたしから、
「・・・キスしないの?」
なんて聞けないっ! 絶対っ!!
あたしが俯いたままメグの前に立っていたら、
「あ。 忘れてた」
とメグが呟くのが聞こえた。
「え?」
なんか忘れ物?と思って顔を上げたら、すぐ目の前にメグの顔がっ!!
唇が触れる直前、
「・・・今日の分のお仕置き」
えっ!?
そ、そんな急にっ!
キスはしたかったけど、イキナリだとこっちも心の準備が・・・っ!
「あ・・・ ―――ンッ」
やっぱり・・・ 何回しても、慣れない・・・ キスッ!
ドキドキして、身体が固まっちゃう。
・・・・・でも、メグのキスは、好き。
耳の後ろの髪を優しく梳きながらしてくる、メグのキスが好き。
あたしからは上手く出来ないけど・・・・・
何度も角度を変えながら唇を食んでくるメグのキスが気持ちいい・・・
そうしているうちに、固まっているあたしの身体から力が抜けて、逆にメグのキスが激しく・・・・・
「んじゃな」
って・・・・・ え? ―――もう終わりっ??
驚いて目を開ける。
「ちゃんとノルマやっとけよ?」
メグはドアノブに手をかけている。・・・・・っていうか、さっきからかけたままだった?
メグはそのままあたしの部屋を出て行くと、リビングでテレビを見ていたお母さんに声をかけてそのまま帰ってしまった。
やっぱり、短くなってる・・・
勉強時間も・・・ その・・・ キスも・・・
・・・まさか、飽きたとか? あたしとキスするの。
「お仕置きと称して散々したしな」
とか?
「それに、あいついつまでたっても上手くなんねーし」
とか思ってるっ!?
ウソ―――――ッ!?
っていうか、ノブに手をかけたままって、どうなのっ!?
さっさと帰りたい、みたいな・・・
ヒドイよっ! メグ――――っ!!


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