パーフェ☆ラ 第4章

E 涼の観察眼


「はぁ〜」
オレが今日何度目かの溜息をついたら、
「またそれかよ・・・ 予選突破出来なかったのは悔しいけど、終わっちまったもんしょーがねーだろ?」
と前の席に向かい合わせになるように座っていた涼が、呆れた顔をしてオレを見た。
「いや、オレだってもうそんなコト気にしてねーよ」
オレが部長をしているバスケ部のインハイ予選が、昨日行われた。
ウチの学校は、もともと特に強いってチームってワケじゃなかった。 けど、それだってやっぱり夢は県大会、全国大会だ。
オレだってそのつもりで今まで練習してきた。 ・・・・・してきたんだけど・・・
結果からいうと、オレたちは予選で負けてしまった。
オレをマークしてたヤツや、最後に時間稼ぎをされたのにはムカついたけど、まぁそれだって反則じゃないから文句は言えない。 オレたちだって対戦相手によってはそういう作戦を取ることだってある。
ただ、ラストのシュートを決められなかったのが心残りだ。
あのときオレは3Pエリアからシュートを放ってしまった。
いつもよりシュート練習をしていたことで、ヘンな自信がついてしまっていたのか・・・
・・・・・・なんであのとき、もうちょっとゴールに近づいてシュートを打たなかったのか・・・
確かに2点差だったから、コレが入れば・・・という考えはあった。
それに、もっとゴールに近づけばあのムカつくプレスをかけてくるヤツに邪魔されて、シュートすら打てなかったかも知れない。
客観的に見ても、残り時間を考えたら あの場でオレがシュートを放ったことはそんな間違っているとは思わない。
思わないが・・・ やっぱり他にもっといい手があったんじゃないか、という考えは拭いきれない。
けれど、オレが今溜息をついているのは、予選を突破できなかったからでも、ラストのシュートが決まらなかったからでもない。
―――溜息の原因は、その試合の後、だ。

「〜〜〜クソッ!」
なんで、あんなトコからシュート打っちまったんだ・・・ 何も逆転狙わなくても、同点でよかったのに・・・
いや、あの場で他にいいポジショニング出来てるヤツはいなかった。
オレがあの場でシュートを打ったのは間違いじゃない。
間違いじゃないけど・・・・・・ 強いて言うなら、入らなかったことだけが間違いだったのか・・・
試合後、体育館ロビーでしばらくそんなそんな事を考えていたら、追試を受けているはずの真由が体育館にやってきた。
なんで真由が? もう追試終わったのか?
・・・・・もしかして、今の試合見てたのか?
「試合には間に合わなかったんだ・・・ 結果だけ聞いた」
真由は追試が終わってから急いで体育館に駆けつけたようだった。
期末テストの数学で赤点を取った真由は、放課後追試を受けていた。
真由が追試を受けるはめになったのは、家庭教師をやっていたオレのせいだ。 オレがもっとちゃんと見ていたら赤点は防げていたかも知れない。
なのに、追試の日と地区予選の日が同じだと知った真由は、自分の追試を放ってオレの応援に来ようとしていた。
オレのせいで赤点を取らせてしまったというのに、さらに追試まで放ってオレの応援に来ようと・・・・・
「予選は2日間ある。勝ち残るから明日来い」
となんとか思いとどまらせたのに・・・
なのに、結局は負けてしまい、真由に試合を見せてやることは叶わなかった。
「・・・・・残念だったね」
・・・好きな女に追試を受けさせるようなめに遭わせ、約束していた試合を見せてやることも出来ず、この上慰められるとは・・・・・・ カッコ悪い・・・
一緒に帰ろうと真由は言ってくれたけど、オレは一度学校に戻らなければならなかった。
それでも、部員たちと一緒に学校に帰るころには、
「まぁ、負けは負けだしな」
と吹っ切れるようになっていた。
帰ったら、試合会場まで来てくれた真由にお礼を言おう。 さっきはかなりオチてたからそんなコトにまで頭が回らなかった。
予選もテストも終わったし、2人で出かける予定を立ててもいい。
・・・そうだ。
どうせなら来週は真由の誕生日だし、どこか行く計画でも立てるか。
となると、早めにアレを見に行かないとだ。
なんて事を考えながら帰ろうとしたら、駅で真由がオレのことを待っていた。
帰ってから話そうと思っていたけど、ちょうどいい。 お互いのウチじゃ、親がいたりして話をするのにも気を使う。
でも・・・・ なんて切り出そう。
いつも、
「どっか行こ?」
って誘ってくるのは真由の方だったから、どうやって誘えばいいのかよく分からない。
それに、誕生日プレゼントを用意する都合もある。 それを先に用意しておかないと・・・
買うものは決まっているけど、オレも詳しくないからな・・・
やっぱり真由に聞くのが一番良さそうだ。
けど、それじゃサプライズにならない。
どうするか・・・・・
そんな事を考えていたら、
「メグ。 ヒマだったらウチに来て?」
と真由が。
真由はなんだかソワソワしている。
・・・? 心なしか、顔も赤くなってるような気がする・・・
真由に言われて真由んちに上がったら、真由の母親は不在だった。
いつもオレが家庭教師で真由んちに来るときは、必ず真由の母親がいる。 真由の母親は専業主婦だ。
おいおいおい―――・・・ まさかだよな?
都合のいい妄想に、自ら突っ込みを入れる。 そんなことがあるわけない。
この前オレんちでオレが真由に迫ったら、
「だ、ダメっ! 無理だよっ!!」
って全力で抵抗してたし・・・ それはないな。
だとしたら、追試も終わったから家庭教師の方もちょっと休止だし・・・ 一体何の用があるんだ?
もしかして・・・
「テストも予選も終わったし、どっか行こ?」
って話か?
だったらオレの方も話しやすいんだけど・・・
でも、さっきまでソワソワしていた真由が今度は何か思いつめているような表情をしている。
どこかに出掛ける話じゃなさそうだ。
・・・・・・まさか・・・!?
「追試もダメだったのか?」
だとしたら、夏休みの補習に強制参加だぞ? それから再追試だ。
そんな事になったら、せっかくの夏休みなのにどこにも出かけられなくなるぞ? 補習と、またオレの家庭教師三昧だ。
オレが心配してそう聞いたら、真由はちょっと怒ったようにして否定してきた。
「そんなコトじゃなくてッ!! 再試合だよッ!」
――――――再試合?
オレと真由との間で再試合といえば・・・
・・・・・・えっ!?
いや、でもまさかっ?
あのとき真由は、
「じゅ、準備が出来てないからっ」
と言ってさせてくれなかった。
ま、その準備ってのも服装や下着の事だって言うんだから・・・笑えるけど。
そんな真由が、なんの前フリもなくいきなり誘ってくるとは思えなかった。
・・・・・・やっぱりオレの勘違いか?
「・・・・・・試合はトーナメント式だから、負けたら次はねーんだけど」
とりあえず今日の試合のことに引っ掛けて、そんな風に返してみる。
「違うよっ! その試合のことじゃなくてぇっ!!」
真由が真っ赤になった顔を背ける。
え? やっぱ・・・ そうなのか?
―――誘ってるって思っていいんだよな!?
そう思ったときには、真由に口付けていた。
微かにシャンプーの匂いがする真由の髪をそっと梳きながら、何度も角度を変えて真由の唇を食む。
ちょ、ちょっと待て!? 慌てるなよ!?
あんまりがっついてると思われたら、せっかく築き上げたオレのクールなイメージが・・・・・ッ!!
はやる気持ちを抑えながら しばらくそうした後、唇を割ろうとしたら真由がオレの胸に手を当ててオレを押しのけてきた。
「?」
え・・・? ダメなのか?
・・・だって、真由から誘ってきたんだよな?
やっぱりオレの勘違いだったのかと思いながら真由の顔を見つめたら、真由はニッコリ微笑んでいる。
・・・・・・なんだよ。 やっぱりいいんじゃねーか。
再び真由を抱き寄せ、キス。
舌先で様子を窺っていたら、真由の方から唇を開いてきた!
瞬時に脳の温度が上昇し、ファーストブレイク並のスピードで舌を差し入れる。
いつもは嫌がって逃げる真由の舌なのに、今日はそれがない。
・・・やっぱり誘っているととって良さそうだ。
一旦唇を離し、真由の手を取りベッドへ移動する。 またキスをしながら真由の制服を脱がす。
シャツのボタンを外して息を飲んだ。
・・・5年のとき、窪田や青島たちが見た真由の胸。
あのとき、真由の胸を見るのは絶対オレが1番だと思っていたから、窪田や青島たちが許せなかった。
いくら、濡れたシャツ越しでもだ。
オレは、今でもあのときの怒りのままヤツらをぶん殴ることが出来る。
その真由の胸が小さな布で覆われただけの状態で、オレの目の前にある。
―――目眩を起こして倒れそうだった。
真由をベッドに寝かせたら、真由はギュッと目を閉じた。
やっぱり緊張してるらしい。
それとも・・・・・・ まさか怖いのか?
いや、真由から誘ってきたんだ。 緊張しているだけだろう・・・
ちょっと訝りながら、下着の上から真由の胸に触ってみる。 真由の肩がビクリと強張る。
・・・・・・コレ、緊張してるだけか?
なんか、無理してるように見えるんだけど・・・
首を捻りながら、それでも下着の肩紐をちょっとずらしてみる。
―――直後、真由がオレの腕を強くつかんだ。
「え?」
驚いて真由を見下ろしたら、真由が震えている。
「・・・真由?」
真由はオレの問いかけも聞こえていないみたいだ。 ただ目を強く閉じて震えている。
―――やっぱり無理をしている。
でも、なんで? なんでそんな無理して誘ってきたんだ・・・?
オレそんなにしたいなんて―――いや、そりゃしたいのはやまやまだけど―――言ってないよな?
混乱する頭でいろいろ考え・・・・・ オレはやっと気が付いた。
―――真由は、今日 試合で負けたオレを慰めようとして誘ってきたのか・・・
オレがあんまり落ち込んで見えたから・・・
・・・・・真由を抱きたいとは思うけど、そんな気持ちの真由を抱くことは出来ない。
というか、慰めや同情で受け入れられたくない。
それだったら、まだ オレの方から無理やり襲った方がマシだ。
オレはテキトーな言い訳をして、真由の部屋をあとにした。
自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んだ。
もう、すっかり試合で負けたことなんて 頭の外に追い出されていた。
さっきのことが、フラッシュバックのように脳裏によみがえる。
・・・・・どうしても、さっき見た真由の胸が忘れられない。
もったいないことをした・・・ という考えが頭をよぎったのも1度や2度じゃない。
次、いつあんなチャンスがやってくるか分からない・・・
全く、男ってのは自分勝手な生き物だ。
同情や慰めは嫌だと言っておきながら、絶好のチャンスを逃したと分かると歯軋りをして悔しがる。
そのせいで、昨夜なかなか寝付けなかったんだよな・・・
オレが昨日のことを思い出してまた溜息をついたら、
「ほら! また溜息ついた。 昨日の試合のことじゃねーんなら・・・ 期末の結果が悪かったとか・・・? いや、お前に限ってそれはねーか・・・」
と再び涼が顔を覗き込んできた。 オレは肯きながら、
「それはないな」
「スゲー自信だな? じゃ、今度はベスト3入りか?」
期末も大体かけたヤマが当たって、まあまあの結果だった(真由だって、そのヤマのおかげで数学以外は平均以上取れた)。
まだ順位発表はされていないから何位かは分からない。 中間が4位だったから、それ以下じゃなければいいが・・・
「そう言えば、真由 数学赤点だったらしいぞ? ま、追試で合格したみたいだけどな」
「・・・・・良く知ってるな?」
追試の結果は翌日にすぐ分かる。
今朝真由は数学教科室に呼ばれて、結果を聞いたみたいだ。
普段から教室ではあんまり話せないオレ達だけど、
「・・・千葉くん? え〜・・・とね、受かりました」
と遠慮気味にもその報告だけはしてくれた。 オレもやっぱり多少の気まずさがあって、
「そう。 良かったね」
って返しただけだったけど・・・
大体同じような問題が出る追試だけど、合格は合格だ。
昨日の事もあるし真由も気にしてるだろうから、今度こそちゃんと誘ってやろう。
「受かったご褒美に、どっか連れてってやる」
「え―――ッ! ホント? メグっ!!」
真由が腕を組んでくる。 その真由にオレが、
「・・・ホラ」
とアレを渡す。
「え・・・ッ!? ウソ・・・」
「お前、誕生日忘れてたろ? それ、プレゼント」
「〜〜〜メグッ!! 嬉しいっ!!」
――――――こんな感じか・・・
とオレがシュミレーションしていたら、涼がニヤニヤ笑いながら、
「これでまた真由のことからかってやろうかな〜」
涼はなぜか真由のことを気に入っていて、いつもおもちゃのように扱っている。
涼には恭子がいるし、完全に恋愛感情じゃないって分かっているから仕方なく黙認している。
大体、オレと真由の関係を涼は知らないんだから、ここで騒ぎ立てたら怪しまれるだけなんだけど・・・
「・・・ほっとけよ」
それでもやっぱり真由を他の男にいじられるのは面白くない。 一応止めてみる。
「なんで? 面白れーんだからいーじゃん。 ・・・あっ!?」
急に涼が、何か思い付いたような顔になる。
―――なんだ?
「分かったぞ?」
意味ありげな笑いをオレに向ける涼。
「・・・・・なんだよ?」
「お前、真由が好きなんだろ?」
―――いきなり核心をつかれるとは思わなかった。
「・・・・・・はは。 いきなりだな。 なんで?」
とりあえず否定しておく。 涼はちょっとだけ首をかしげて、
「カン?」
それだけかよっ!?
「つーかさ。お前このクラスになってから、前以上にカッコつけるようになったじゃん」
「はぁ? ・・・オレがいつカッコつけたよ?」
オレがちょっとムッとしてそう答えたら、
「入学当時から!」
と言って涼は笑った。「それが2年になってパワーアップした」
――――なんだそれは?
確かに、真由と同じクラスになってからは、カッコ悪いところを見られないように細心の注意を払ってきたけど・・・・・
「だからって、それがなんで市川さんのことと繋がる?」
「オレが真由のこといじると、お前面白くなさそーな顔するもん。そんときだけはカッコついてない。素んなってる」
―――ウソだろ?
「具体的に言うと、バーベキューんときだろ? あと、真由が3年女子に絡まれたとき。あと、ベランダでオレが真由のこと抱きしめてたとき。 ああ、新学期初日もそうだったな」
こいつ・・・・・
学内1モテて、女の事しか見てないと思ってたら・・・・・ ケッコー観察してたのか。
驚きを顔に出さないようにしながら、
「それだけか」
肩をすくめる。 けど、涼はまだしつこく食い下がってくる。
「それだけじゃない。 真由はズバリお前好みだ」
「・・・・・お前にオレの好みの何が分かる?」
涼はちょっと目を細めて、
「お前は・・・ 胸の大きい女が好きだ! 間違いないッ!!」
「胸・・・ッ!?」
思わず絶句する。 オレが否定しようとしたら、それより先に涼が、
「それは、部室に置いてあったアヤカのグラビア雑誌をお前が見ていたという、1年の目撃証言からも確実だ」
・・・・・そんなとこ、誰が見てたんだ・・・ いや、そんなことより・・・
「でも、・・・・・・彼女そんなに胸大きくないだろ?」
小学生の頃から、小さい方じゃなかったけど・・・・・・ 確かに、昨日見た真由の胸はケッコー・・・いや、かなり・・・
別にオレは巨乳好みじゃないが・・・ まぁ、小さいよりはそれなりのサイズがあった方がいいだろうとは思う。
でも 涼に、例え想像であっても真由の胸なんか思い描かれたらたまらない。
オレがそんな感じに誤魔化そうとしたら、
「いや? 見た目よりあったぞ? 着痩せするタイプなんじゃねーか?」
「・・・・・なんでお前がそんなこと知ってる?」
「だから、ベランダでふざけて抱きしめてたとき? あんときケッコーあるな〜と思って」
――――――何・・・!?
「あ、怖っ! お前また素んなってるよ? 顔」
・・・・・クソッ
これ以上涼と話をしていたら、涼のことをぶん殴ってしまいそうだ。
オレは早々にこの話を切り上げることにした。
今日は予選翌日ということで、部活は休みだった。 まぁ、今まで頑張ってきた分の骨休めみたいなもんだ。
とりあえず、教室ではろくに話せなかったし、帰ったら追試合格した事を改めて褒めてやろう。
本当は一緒に帰りたかったけどそれは出来ないし、その前に、授業が終わると同時に真由はさっさとどこかに行ってしまったようだった。
てっきり先に帰っているもんだと思っていたのに、真由はまだ帰っていなかった。
それどころか、いつまで待っても真由が部屋に入ってくる様子がない。
一体どこに行ってるんだ・・・?
そんなことを考えながら待っていたら、9時過ぎになってやっと隣の部屋に人の気配を感じるようになった。
真由が帰ってきたみたいだ。
ベランダの窓を開け、話をしようと思ったら、
「ごめん、メグ! あたし今ちょっと忙しいんだよね。 イロイロ勉強しないといけないことが・・・・・」
追試も終わったっていうのに、真由の口から勉強なんて言葉が出てくるとは・・・
オレが軽く驚きながら、
「勉強って・・・ じゃ、オレが教えてやるよ」
と言ったら、
「いっ、いいっ!! あたし1人で出来る勉強だからっ!!」
と、真由が慌てて断ってきた。 そして、
「じゃ、ごめんね!? オヤスミっ!!」
とさっさと窓を閉めてしまった。
? なんなんだ? 一体・・・
それに、こんな遅くまでどこに行ってたのか・・・・・
―――まさか・・・
今日はバスケの地区予選の二日目だ。 準々決勝、準決勝、決勝戦が行われている。
オレ達のようにすでに初日で負けた学校は用のない日だけど、準々決勝以上に進んだ学校・・・・・悔しいことだが、矢嶋の学校は今日も試合会場のK体育館に行っている。
矢嶋の学校がどこまで勝ち進んだのか知らないが・・・ まさか真由はそれを見に・・・?
いや、まさか、真由に限ってそんなこと・・・・・
―――って、言い切れるか?
現に、この前真由は矢嶋に会っていた。 金を返してもらっただけのようだが・・・
でも・・・ いや・・・
―――どっちなんだ?
疑心暗鬼に取り憑かれたオレは、二晩続けて睡眠不足になった・・・・・

翌日。 眠い目をこすりながら教室に入ろうとしたら、
「オイ! やっぱりオレの言った通りだったぞ!」
と涼が興奮しながらオレの背中を叩いてきた。「あれを見ろ」
「は? なんだよ、朝っぱらから・・・・・ ッ!?」
涼が指差す方を振り返り、目を見開いた。
教室の後ろで、真由が成田や佐倉たちクラスの女子何人かと固まって話をしている。
「すげぇな」
・・・・・な、なんなんだ? あの格好は・・・
「つーか、パンツ見えそうじゃね?」
涼が長身をちょっとかがめる。
確かに真由は、今までだって決してスカートは長い方じゃなかった。 それで自転車の立ちこぎをされたときは、相当焦ったし。
でも、今日のはさらに・・・・・ っつーか、短すぎるだろっ!?
それに・・・
「な? やっぱ胸デカかったろ?」
いつも真由はシャツの上にベストを着ている。 でもそれを今日は着ていなかった。
いや、着ていないだけじゃなくて、シャツのボタンも第2ボタンまで外して・・・
「あんな格好してたら、誘ってるって思われるよなぁ。 って、誘ってんのかな? マジで」
オイッ! 相当胸強調されてんぞっ!?
何考えてんだ・・・ 真由のヤツ・・・
真由の行動はいつも予想外のことばっかりだけど、今日のはまた・・・・・
もしかして、昨日遅かったことや、
「勉強するから」
って事と何か関係あるのか?
―――って、そんなことはどうでもいい。
今は、あの格好だ。 すぐに止めさせないと・・・・・
でも、なんて言う?
まさかいきなり、
「オイっ! 何だその格好はっ! 今すぐやめろ」
なんて教室じゃ言えないしな・・・
オレが悶々としているうちに、クラスの男が何人か真由に話し掛け始めた!
ホラッ! 早速だッ!!
クソッ・・・ ホントに何やってんだよ!? お前はっ!!


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