Secret Love affair  #1 階段室


常識やモラルなんか破ってやる。

地獄に落ちたって構わない。

彼女がいなかったら、全てに意味なんかなくなる。

彼女がいるから、僕は現実を見ることが出来る。

彼女の温もりを感じて、初めて僕はリアルを感じる事が出来る。

―――キミだけが僕のリアル…



週に1回の風紀の見回りで、僕たちは屋上に出る階段室の最上階にいた。
「あ・・・ はぁ・・・」
彼女の口から吐息が漏れる。
僕は彼女の首筋に唇を這わせながら、制服の上から彼女の胸を弄った。
彼女の力が入らなくなった腕が、それでも僕を拒もうと 僕の胸に押し当てられる。 それを無視して、耳の付け根辺りを舌先でくすぐるように舐めたら、彼女が小さく震えた。
「こ・・・ こんなのっ ンッ ・・・こ、困るっ」
切なそうに寄せられた眉。
「・・・アッ ・・・あ、あたし・・・は、り、陸が・・・ンンッ」
その名前をかき消すように彼女に口付ける。
―――知ってるよ、そんなこと。
気が狂いそうなほど、分かってるよ。
分かってるけど・・・ これ以上この想いを秘め続けていたら、僕は壊れてしまう。
自分の想いをしまい込んで、キミとアイツが一緒にいるのを見ているだけで、僕は壊れてしまう。
・・・いや? もう壊れているのかも知れない。
じゃなかったら、キミにこんな事出来るワケない。
彼女のブレザーのボタンを外し、肩口に手を差し入れそのままブレザーを落とそうとしたら、彼女は背をぴたりと背後の壁につけて、僕がブレザーを脱がそうとするのを阻んでくる。
「・・・村上さん? 背中・・・」
ブレザーを脱がせるために背を壁から離してもらおうとしたら、ギュッと目を瞑ったまま彼女は首を振っている。
「シワになるよ?」
俯いたまま首を振り続けるキミ。
「・・・・・僕はいいけどさ」
僕はそう言いながら、今度は彼女のシャツのボタンを外す。「シワになって困るの、村上さんじゃない? 変に思われるかも・・・ アイツに」
僕がそう言ったら、怯えたような目線を僕に向けて、彼女はそのまま固まってしまった。
彼女の背中に腕を回して ゆっくりと僕の方に抱き寄せるようにしたら、よろけるようにしてやっと壁から背を離してくれた。
そんなに、アイツにバレるのが怖いの?
バレて別れを切り出されるのが怖い? それとも、アイツを傷つけたくない?
・・・・・結局、いくら僕がこんなことをしたって、キミの頭の中にはアイツの事しかないんだな。
ブレザーを彼女の足元に無造作に落とす。 シワなんか最初から気にしていない。
ネクタイの結び目に指をかけて一気に引き抜く。
「あっ・・・」
そう呟いて彼女は顔をそらした。
ボタンを外したシャツの合わせから、彼女の白い胸元が覗く。
激しい目眩に襲われ、僕も彼女から視線を外してちょっとだけ呼吸を整えた。
・・・どうあがいても、心までは僕のものになってくれないキミを メチャクチャにしてしまいたい。
・・・大好きなキミを 優しく抱きしめたい。
その二つの思いが大きな波になって、僕に交互に襲いかかってくる。
僕は一方の思いを封じ込めて、優しく彼女のシャツを脱がせる。
淡いブルーの下着姿のキミ・・・
上半身は下着姿なのに、下はスカートを穿いたままなのが余計に僕を煽る。
怖いぐらいの官能的な空気が辺りにたちこめる。
そっと肩紐を腕の方に落とし、下着を少しだけずらした。
現れたキミの可愛い乳房に、再び目眩。
目眩が治まらないまま、キミに口付ける。 そのまま唇を首筋から鎖骨に移動させた。
左手を彼女の背中に回して支えるようにし、右手を彼女の胸に当てた。
「・・・んっ」
すぐに反応を返してくるキミの身体が可愛い。 そのまま優しく揉みほぐした。
「・・・んんッ ・・・ん―――ッ」
「・・・出せば? 声・・・」
もう片方の胸に唇を移動させながら、「どうせ誰もこんなトコ来ないし」
彼女は唇をかみ締めたまま、首を力いっぱい振っている。
―――誰かに聞かれたら困るから我慢してる?
「・・・んッ」
―――それとも・・・ こんなとこまで来ても、まだ僕のことを拒んでる?
愛しさと憎らしさが混じる。 僕は彼女の胸の先に歯を立てた。
「あぁんっ! ・・・やっ、やめて・・・」
彼女の膝が崩れて、壁に寄りかかるようにして座り込んだ。 膝を立てている彼女の足の付け根辺りまでスカートがすベリ落ちる。
僕も彼女の前にしゃがみこみ、再び胸の先に唇を落とした。 立てた彼女の膝の間に腕を差し入れ ショーツの上からそこに指を当てる。
彼女のそこは熱く・・・・・  もう、濡れていた。
「んんっ・・・」
だけど まだ彼女は固く唇を閉じたまま、僕の動きに身を委ねようとしない。
身体はこんなに正直に反応を示しているくせに、頭では絶対に僕を受け入れようとしてくれない。
そんな頑なな態度を見ていたら、どうしても彼女を鳴かせてみたくなった。
―――夢中で鳴き叫び、僕にしがみついてくるキミを見てみたい。
僕は座り込んでいる彼女をちょっと抱き上げ、僕の腿の上に向かい合わせになるように座らせた。今度は僕が壁に背を預ける格好で座り込む。
「っ!? や、やだっ」
足を閉じることが出来ない体勢に、彼女は焦りを見せた。 逃げようとする彼女の腰を左手で押さえつける。
「逃げないで・・・」
彼女の耳たぶを甘噛みしながら、そっとショーツをずらして熱く潤ったそこに指を這わせた。
「あんっ あっ・・・ イヤ・・・」
彼女が白い喉を仰け反らせる。 その首筋に噛み付くように口付ける。
もう彼女は腰に力を入れることが出来ない。
逃げる事はなさそうだったから、腰を押さえつけていた左手を解放して、指先でツツツと背中を撫で上げた。
脇に近い所をそのまま撫でたら、
「あっ! いやんっ」
と彼女が背をしならせた。 慌てて彼女の背中を押さえる。
「村上さんって・・・ 感じやすいよね。 元々そうなの?」
・・・それとも、アイツにそうされたの?
そう思ったら、僕の中の説明のつかない感情がザワザワと騒ぎ出した。
ショーツの中にあった指の動きをちょっと早める。
「やっ あ、はっ ・・・ンッ」
苦しそうに眉を寄せるキミ。
―――もっと鳴かせたい。
僕が唇を胸に移動させようとしたら、
「・・・い、五十嵐くん・・・ や、やめ・・・て」
と彼女が僕の肩に両手をついて懇願してきた。
「・・・どうやって? もう無理だよ・・・」
僕は彼女の耳元に唇を寄せて、「こんなになってるのに・・・」
ショーツの中の指を動かし、彼女に水音を聞かせる。
「あっ あぁ・・・ や、だ・・・」
また素直に反応する身体。
彼女は声を震わせながら、
「だ・・・ ダメに、なる・・・」
「何が」
「・・・はぁっ・・・ あ、あたしも、五十嵐くん、も・・・ あ、あんっ あっ」
彼女の息遣いが荒くなってきた。「り・・・ 陸、や、麻美だって・・・・」
あたしたちみんな、と彼女が震える声で呟く。
「―――どうでもいいよ」
指の動きをさらに早くした。
「ひゃっ あぁっ! ・・・ン、やめっ・・・」
アイツも渡辺さんもどうでもいい。
「い、がらしく・・・ あっ」
僕にとっては全てが虚構なんだから。
キミ以外の全ては、僕にとってつまらない作り物でしかないんだから。
「はぁっ ・・・も、ホント、に・・・ やめ、て・・・」
キミだけが僕の現実だ。
「あ、ああ・・・ あんっ」
キミがいなかったら、僕は生きていけない。
「ダメ・・・ ダメ・・・ あぁっ」
キミがいなかったら、僕は呼吸の仕方さえ忘れてしまう・・・
「や、やぁ・・・ はっ ・・・り、陸・・・」
彼女は僕の肩を力いっぱい握り締めたまま、・・・・・アイツの名前を呼んだ。
僕の頭が余計に熱くなって、彼女を攻める指の動きに拍車をかける。
「やぁっ! ・・・あ、ダメっ ダメっ!」
背中に回していた手で彼女の頭を抱きかかえ、僕の肩に押し付けた。 首筋に、彼女の熱い吐息がかかる。
「あ・・・ あたしっ・・・ んっ」
彼女が僕の皮膚ごと制服を握り締める。
「・・・・・・我慢しなくていいよ」
ちょっと迷った後、力なく首を振る彼女。
「・・・・・・苦しいでしょ? イキなよ」
彼女の耳元で囁いたあと、「て言うか、イクまで終わんないよ?」
彼女の耳に舌を差し入れた。
「やっ! ああんっ!!」
一瞬腿を突っ張らせるようにしてほんの少しだけ腰を浮かせた後、彼女が僕にしがみついてきた。
彼女の中が、別な意思を持った生き物みたいに蠢いた。
「・・・・・・あ、ん・・・ り、陸・・・ 陸・・・」
彼女は恋人の名前を何度も呟きながら、僕の腕の中で果てた。
ショーツの中から手を引き抜き、濡れたままの手で彼女を抱きしめる。
しばらくそうして彼女が落ち着くのを待った。
「・・・大丈夫? 村上さん・・・」
ちょっと顔を覗きこむようにして尋ねる。 彼女はチラリと僕を見上げて、
「・・・・・・だいじょばない」
その言い方に、思わず笑いがこぼれる。
再び彼女を抱きしめた。
「・・・このまま、いつまでもこうしていたい」
「もう・・・ これ以上困らせないで」
彼女は僕からちょっと身体を離して、「・・・陸が待ってるから・・・」
僕は素早い動きで彼女の肩口に口付けた。
「やっ!? い、五十嵐くんっ?」
慌てて逃げようと彼女が身体を捻った。 けど、僕はそれを許さない。
そのままそこをきつく吸い上げた。
「いっ、痛っ!」
彼女が肩をすくめた。
十分吸い上げてから、音を立てて離れる。
「な、何するのっ!?」
「・・・何も?」
至近距離で彼女と目を合わせる。「今日のことが夢じゃないってシルシ・・・ 付けただけ」
「えっ!?」
彼女は驚いて首を捻り、僕が付けた痣を確認した。
「ちょ・・・っ こ、困るよっ!」
彼女は 困惑に揺れる瞳で僕を見上げてきた。
「困らない」
今度はその痣を舌先で優しく舐めた。「・・・僕以外の人間の前で服なんか脱がなきゃ、困らない」
「・・・・・・酷い・・・」
彼女は顔を赤くして僕のことを睨みつけてきた。「・・・五十嵐くんなんか、大嫌い!」
目に怒りの色を滲ませている。
・・・彼女の視線が僕に向けられている。
それが、愛情じゃなくたっていい。 憎しみや憎悪だって構わない。
その瞳にさえ・・・ ―――僕は欲情してしまう・・・

「結衣っ!」
2人で教室に戻ったら、商業科のアイツが僕たちの教室までやってきていた。
「り、陸っ!?」
僕の横で息を飲む彼女。
「遅ぇーよ」
と僕を睨みながらアイツは彼女に近づいて、「今日バイトないんだ。一緒帰ろ?」
と彼女の肩を抱いた。
「う、うん・・・」
彼女は俯きながら帰り支度を始めた。
先に帰り支度が出来ていた僕は、カバンを肩にかけると、
「それじゃ、お先に」
と言って彼女の横を通り抜けた。
彼女からの返事はなかった。 ・・・けれど、別に構わない。
返事がないことが、一番の返事だから。
教室のドアに手をかけたとき、
「ん? 結衣? 制服汚れてるけど、どうしたの?」
アイツの声がした。
「えっ!?」
続いて彼女の驚いた声。
ちょっとだけ振り返ったら、アイツが 彼女の背中に付いていたゴミを掃っているところだった。
その彼女の、耳まで真っ赤になって俯いているところを確認して、僕は教室を出た―――・・・


To be continued・・・